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バリキャップを使ったアナログシンセ用VCO回路 (1)

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バリキャップを使ったアナログシンセ用VCO回路 (1)
バリキャップ(可変容量ダイオード)を使ってシンプルな楽器用のVCOができたので、回路や注意点などをまとめておきます。

アナログシンセ用というかモジュラーシンセ用かな。1V=1オクターブみたいな高度なことはしてませんし。(できるかもしれませんが)

基本はCR発振回路のコンデンサをバリキャップに置き換えただけの簡単な回路で、基本波形は大体作れました。ごちゃごちゃしそうなので今回はとりあえず矩形波の基本編(1)ってことにします。他の波形は(2)で後ほど。

バリキャップについて

バリキャップ(英語: varicap diode, variable capacitance diode)とは、ダイオードの一種で、端子に加える電圧によって静電容量が変化するダイオードである。可変容量ダイオード(かへんようりょうダイオード)やバラクタとも呼ばれる。

(引用元wikipedia 参考 : マルツ

バリキャップはカソードに加える電圧で静電容量(キャパシタンス)が変わるので、モジュラーシンセのVCOにそのまま使えるじゃないと思ったのが発端。

ただバリキャップはダイオードなのでコンデンサと同じように使えるわけじゃなく、この辺は難しいのでシミュレーター(LTSpice)の力を借りたり実際試して使い方を探りました。

バリキャップはAM用とFM用がありますけど、FM用は静電容量が小さいので楽器用の周波数が低い回路には数が多くなりすぎるのでAM用のバリキャップを選ぶことになります。

AM用バリキャップの容量と容量比

AM用では定番の東芝の1SV149の逆電圧と静電容量のグラフ。

バリキャップ1SV149の逆電圧VR(V)と静電容量C(pF)のグラフ

1SV149のデータシートには逆電圧1V~8Vで最大540pF~30pFとなってます。シンセ用では小さいので何個か並列にして容量を増やす必要があります。(CR発振回路の場合)

CV1~8Vの容量比は標準で19.5。実際5オクターブ(61鍵盤)ぐらいの周波数変化になったので悪くないかな。

1SV149の代替品や入手先

AM用のバリキャップは少なくなって入手しづらくなってます。1SV149はもう生産されてなくてまだ売ってるところはあるけど価格が高め。秋月電子に売ってたころは1個20円でした。

今の時点で1SV149の代わりになるおすすめのバリキャップは日立のHVR100HVR100は鈴商のネットショップに売ってて在庫も豊富で安価。チップ部品だけど大きめ(3mmぐらい)でスペックは1SV149とほぼ変わらないかと。

あとはAliexpressに売ってるBB112。安いわけじゃないのでわざわざ中国から輸入してまでBB112を選ぶ必要はないかな。

▼実物の大きさ。左から1SV149、HVR100、BB112

AM用バリキャップ一覧。左から東芝1SV149、日立HVS100、中国のBB112

実際の回路

既存のCR発振回路のコンデンサをバリキャップに置き換えるには、コンデンサがGNDに接地してて電源が~2Vで動くCR発振回路が条件です。違う動作原理の発振回路ならまた変わってくるかもしれません。

電源が2VまでなのはLTSpice(シミュレーター)やブレッドボードで試してそういう結果になりました。原理は理解してません (´ω`;)オイ 正確には電源が2Vじゃなくて充放電の電圧(三角波)のピークが1.5Vぐらいまでなら動作します。

あと発振回路のICはCMOSを使うのも需要なポイント。CMOSの内部はMOSFETで入力インピーダンスが高いので発振周波数を決める抵抗値を高くできる=バリキャップの数を減らせます。

電源は1.8Vの三端子レギュレータを使うと簡単に作れますよ。

シュミットトリガインバータ x バリキャップ

ロジックICのシュミットトリガインバータを使うと抵抗一本とコンデンサ一個で発振するので一番簡単。一個30円ほどで安いところも◎。定番の74HC14はCMOSだし6回路入なのでいっぱいVCO作れます。いや、コンパクトな2回路入りとか欲しいけどないんですね。

回路図

バリキャップ(1SV149)とシュミットトリガインバータ(74HC14)のVCO回路図。

▼ブレッドボードの配線例。抵抗1Mで1SV149は5つ並列。SN74HC14Nの電源は1.8V(緑)。CV用に9V(赤)の電源を可変抵抗で分圧して1~8V(紫)を作ってます。CVの抵抗成分はないほうがいいので単電源オペアンプNJM13404のバッファ回路を挟んでますけど、とりあえずはなくてもいいです。

バリキャップとシュミットトリガインバータ74HC14NのVCOをブレッドボードでテスト。

▼前にツイッターにあげた動画。アンプなしで圧電スピーカを鳴らしてるので音量小さい。この時は抵抗が2.2Mで1SV149が3つでした。

LMC555 x バリキャップ

555も同じようにコンデンサをバリキャップに置き換えればVCOになりますけど、NE555ではダメで電源が1.5Vから動くLMC555が必須です。LMC555はCMOSですし。

LMC555のいいところはデューティ比が変えやすかったりカスタムしやすいところですかね。有名なICなので情報が多いのも◎。PWM(パルス幅変調)や、R1とR2を入れ替えてノコギリ波が作れたりします。

回路図

バリキャップ(1SV149)とLMC555のVCO回路図。

注意点

どっちの回路にも言えますが周波数を決める1M(1000k)の抵抗値は、これ以上高くすると周波数が微妙に揺れてモジュレーションをかけたようなサウンドになってよくないです。抵抗値を増やせばバリキャップを減らせますけど、できるだけ抵抗値は低くしてバリキャップを増やしたほうが安定した音(波形)になります。バリキャップは貴重になりつつあるの悩ましいところではありますが。

あとバリキャップに加える逆電圧CVの出力インピーダンスは低いほうがいいです。(抵抗成分はないほうがいい)。抵抗値が高くなるにつれて充放電の波形が歪みます。CVはオペアンプでのバッファ回路を挟んで出力抵抗をなくしてから入力するのがいいかなと。

LTSpiceのシミュレーション

シュミットトリガインバータは何かうまく動いてくれなかったので、555と1SV149でシミュレーションしてみました。がCVでが3ピン矩形波の出力。

LTSpiceでバリキャップ1SV149とLMC555のVCO回路をシミュレーション(クリックで拡大表示)

1SV149のSpiceモデル

ずっと前に1SV149のspice modelをコピペさせてもらったサイトがなくなってるのでここに載せておきます。

LTC/LTspiceIV/lib/cmp/standard.dioをテキストエディター等で開いて↓をコピペして再起動すれば反映されてるかと。ダイオードのvaractorで探します。

.model 1SV149 D( Cjo=1000p VJ=4.84 M=3.8 BV=15 Ibv=50n Isr=2p Rs=1.1 type=varactor mfg=TOSHIBA )

最後に

とりあえず基本編はこんな感じ。回路は超簡単ですね。

次回(2)はこの回路の応用でノコギリ波、三角波、正弦波を作ってみます。

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